カトリック山手教会聖堂
2025年1月13日
2025年1月13日
ぶらり建築散策
カトリック山手教会 聖堂に立ち寄りました。
場所は神奈川県横浜市。
横浜港を形成する半島根本に位置し、横浜中華街から南の急斜面を登った先にこの建物はあります。
その初代は近代日本最初の教会「横浜天主堂」として1862年(文久2年)に献堂されますが、付近の市街化による移築と関東大震災により崩壊。その10年後、第二次大戦前の1933年(昭和8年)にゴシック様式のコンクリート造として現在の場所に献堂されます。設計者は山手教会信徒であったチェコ人のJ.J.スワガー氏。施工は関工務店。現在は横浜市認定歴史的建造物に指定されています。
菊名教会の司教さんより御薦めいただき伺いました。
この階段が聖堂内の空間に活きています。(後述)
綺麗で上品な聖堂内。光の入れ方とその明暗の使い方が上手く、空間に奥行を感じます。
全幅はおよそ11mながら自然光が行き届いています。
背面入り口側。手前の影によりより強調されて見えるバラ窓。
聖堂中央。読み書きに問題ない光量。(条件:冬晴れ/13時頃)
無垢材の椅子。建替え当時のままであれば齢90超ですがまだまだ現役のようです。
足元の突起はオットマン。手前に倒して使います。
聖堂側面。地盤面より床高を高くした設計が聖堂内の採光確保に寄与しています(※外壁の色分け線が内部の床レベル) 裏には建物がありますが、聖堂内にて極端に明暗差が出ていないことからもその有効性が確認できます。
指した先、12~13㎝程の長細いガラスはマリア像頭上のトップライト。コストを掛けずしっかりと光を入る設計。
献堂より90年。
外は海風、聖堂内はたくさんの方が土足で出入りします。決して良い条件とは言えない中で今だ現役なのはなぜだろう?何か特別なことをしているのだろうか?という疑問が湧きます。
居場所がある。
この教会で感じたのは、人の居場所。たくさん自然光が入る空間はただ 明るい だけではなく、季節・天気・時間の移ろいにより室内の明暗に差が出ます。一様に並んだ椅子も、中央・隅っこ、入口・奥、明・暗、その時にあった場所を自分で選ぶことができる。それが居場所につながるように感じます。もちろん教会は目的があって皆さん参られますが、目的がなく訪れた方にも心地よいはずです。居場所があるから人が訪ね、時間が愛着を生む。愛着があれば手入れし、手入れすればより大事に扱う。そうして大事にされたものは長持ちします。建物にも同じことが言えるのだと思いますが、最初のきっかけは 居場所 なのかもしれません。
基本に忠実な設計も忘れてはいけません。何処の教会を参考に設計された経緯があるやもしれませんが、醸し出される品格はなかなかマネできるものではありません。光の使い方・恰好の整え方は意匠設計のお手本のようです。
御薦めしてくださった司教さんに感謝です。
ちなみに現在は片塔の山手教会聖堂ですが、初代横浜天主堂は双塔のゴシック建築だったそうです。横浜のノートルダム大聖堂と呼ばれていたのでしょうか、見てみたかったです。
(もしご訪問を希望される場合、観光地ではない点にご留意ください。無宗教・神徒・仏教徒、どんな方でも参っていただいて大丈夫とのことですが、聖堂に入られる前には事務方へのお声掛けと聖堂内献金をされてから始められることをおすすめします。)
場所:横浜市中区山手
撮影/Iphone
写真/無加工