x
instagram

ときの忘れもの ル・コルビュジエ 展

2025年3月14日

ぶらり建築散策

ル・コルビュジエ 展を見に「ときの忘れもの」 に立ち寄りました。

場所は東京都文京区。

JR山手線の北に位置する駒込駅。そこから徒歩10分程のところにあるアートギャラリー「ときの忘れもの」南青山で営業されていたところ数年前にこの建物に移転。

建物は「ときの忘れもの」移転以前の1994年(平成6年)竣工。元用途:個人邸+集合住宅、規模:RC造/3階建、設計者:阿部勤(1936-2023)。事務方の案内によると、以前から顧客であった阿部氏が南青山を移転すると聞き、家主のご高齢を理由に近々移る予定の個人邸を紹介したのがきっかけ。改装を経て個人邸はアートギャラリー「ときのわすれもの」となった。改装は事務所として不要な箇所を閉じた程度であまり手は加えていないという。

今回のメイン展示はル・コルビュジエのリトグラフ(版画)

ル・コルビュジエは本名:シャルル・エドゥアール・ジャンヌレ=グリといい、スイスに生まれフランスを軸に世界で活躍した建築家で近代モダニズム建築の三大巨匠と呼ばれる人物(1887-1965)。日本で見れる彼の建築は東京上野にある国立西洋美術館であり、かつ日本唯一のコルビュジエ作品でもある。自身の建築設計の説明のため生み出したモデュロール(人体寸法を黄金比で表した建築モジュール)は建築界へ影響を与えるだけに留まらず絵画としても愛され、建築作品とともに今も人々を魅了し続けている。

コルビュジエ展を見つつ、建築見学です。

原設計ままの門扉は、ギャラリーになるのを見越したかのような雰囲気。

アプローチ。足元にあるのも美術品。

玄関内。床は外と同じタイル。

次の間。玄関扉から靴を脱ぐところまで少し間があり、吉村順三「井之頭の家」で感じた一呼吸置くあの雰囲気と似たようなものを感じる。正面の展示がコルビュジエのモデュロール。

2階廊下。玄関から上の3階まで続くこの空間がすべてアートギャラリーとなっている。

連続する空間の最上階、3F渡り廊下から踊り場側を見る。踊り場奥のディスプレイ、元は吹抜けで断面上雁行した位置にある下階元キッチンとつながっていたが改修時に用途が変わったためガラスで塞がれたとのこと。

正面、安藤忠雄氏のリトグラフ。

3F渡り廊下。扉に合わせたためなのか阿部建築の廊下にしては意外な幅。

3F渡り廊下から見下ろす。外→玄関→2階と同じテクスチャタイルの床が連続することによって、家にいながら外を感じる空間となっている。(吹抜側の白サッシは改修時に付け加えたようにも感じるが質疑失念してしまい真偽不明。)

コルビュジエ・磯崎新・安藤忠雄・他、たくさん取扱いがあった(スケッチやメモを見てミーハー的になってしまうのは建築好きあるあるだと思いたい。)

写真上:外観西面ファサード側。

写真下:外観南面。左側がときの忘れもの。右側が集合住宅。

外観。壁面に連なる窓がいつもの阿部建築とは別物のように見えるが、壁の西洋建築にアジアの深い庇をつけるあたりが僭越ながら阿部建築らしく、また屋内空間を体感するといつもの阿部建築と同じかもしくは近しい属性を持ち合わせていると感じる。

とはいえ窓が一様にここまで並ぶと気になるのも事実。なにか理由があるのだろうか。現状を確認するとガレージの上階を除くと各階1スパンに5個づつ規則的に配置されているのがわかる。均一に光を入れつつ、内外面の圧迫感を減らすためだろうか。核心には遠い気がする。ただじっとみていると”面に開けた窓”という認識から”窓と窓を受ける柱”のように見えてくるから不思議だ。庇と窓の関係だけを見えればフランク・ロイド・ライトのプレーリー様式にも見えて、なかなか奥が深い。

綺麗な壁 / 庇の恩恵

ファサード面はコンクリート表面がとてもきれいだった。これは庇の恩恵だろう。一方の南面は意匠として庇が分かれている。庇がないところも汚垂れ処理の設計がなされていて極端な経年変化ではなかったが、見た目には差を感じることができた。これは同年竣工の同建物でありながらも経年比較ができるという意味において大変勉強になる。いずれにしても竣工から30年が過ぎたとは思えないくらいの綺麗さに改めて畏敬の念を覚える。

阿部勤

設計者の阿部勤氏と阿部氏の自邸である「中心のある家」は建築界隈では知らない人がいないくらい有名で、自邸は映画「蝶の眠り」のロケ地としても使用された。また阿部さんは私淑の建築家であり、僅かな期間ながらお亡くなりになる前に交流を持たせていただいた。その御縁からその後の偲ぶ会、ぼんたな、そしてときの忘れものと度々の御縁をいただいている。切に感謝申し上げたい。

事務所の方にはお忙しいところご親切にまた写真の許可もいただき、ありがとうございました。部数が限定されているリトグラフですが、展示品はまだ在庫があるとのことでしたのでご興味持たれた方はぜひ。

ときの忘れもの:Watanuki Ltd. | Toki-no-Wasuremono

展覧:「没後60年 ル・コルビュジエ 建築賛歌」 

日時:2025 3/11~3/22 11:00~19:00

場所:東京都文京区本駒込 

出典:建築概要/住宅建築©建築資料研究社、故人年表/wikipedia

撮影/Iphone

まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
  • 〒153-0063東京都目黒区目黒2丁目4-25目黒第一マンション402
  • TEL03-6451-2295
  • MAILiwasaki@sekkeiten.com
©︎ 2024 iwasaki sekkeiten