ときの忘れもの ル・コルビュジエ 展
2025年3月14日
2025年3月14日
ぶらり建築散策
ル・コルビュジエ 展を見に「ときの忘れもの」 に立ち寄りました。
場所は東京都文京区。
JR山手線の北側、駒込駅から徒歩10程のところにあるアートギャラリー「ときの忘れもの」もともと別の場所で営業されていたところ東京オリンピックの煽りを受け移転することになり、その際たまたま空きがあった建物を紹介した方がこの建物の設計者でもある、故阿部勤氏。
建物の竣工は「ときの忘れもの」移転より20年程前の1994年(平成6年)元の用途は個人邸+集合住宅。規模はRC造/3階建て(出展:住宅建築©建築資料研究社)家主さんがご高齢で移ることとなり個人邸が空き、そこへ移ったかたち。その際アートギャラリーに改装したとのこと。
展示されているル・コルビュジエは建築界の三大巨匠。1887年スイスに生まれ主にフランスで活躍した建築家、77歳没。自身の建築設計の説明のために生み出したモデュロール(人体寸法を黄金比で表した建築モジュール)は建築界に留まることなく、絵画としても世界中で好まれています。
コルビュジエ展を見つつ、建築見学です。
門扉。元とはいえ住宅とは思えない感じ。それが移転の決め手になったのかもしれません。
アプローチ。足元にあるのも美術品です。
玄関内。床は外と同じタイル。
次の間。靴を脱ぐところ。玄関扉から少し間がある。正面中央にあるのがコルビュジエのモデュロール。
玄関から連続する2階の廊下。吹抜が良いバッファーとなっている。
3F渡り廊下から踊り場を見る。踊り場奥は断面上雁行した位置にある下階元キッチンとつながる元吹抜。現在はディスプレイとしてその役割を担っている。
安藤忠雄さんのリトグラフ(版画)
3F渡り廊下。人が通るところ=芯々1050㎜とするルールが阿部仕様と思っていたからこの幅は少し意外。
3F渡り廊下から見下ろす。玄関と同じテクスチャタイルの床、外と連続する内としたい意図が見える。吹抜側の白サッシは改修時に付け加えたものだろうか。
コルビュジエ以外にも磯崎新さん他、たくさんのリトグラフを取扱いされていました。スケッチもメモも拝見しましたが、見るとミーハー的になってしまうのは建築あるあるでしょうか。
外観。印象的な連窓に加えトップライトもありいつもの阿部建築とは別物のように見えますが、屋内の面と層の空間を体感すると同じかもしくは近しい属性を持ち合わせている建築と感じます。
庇の恩恵
ファサード面の庇下のコンクリート表面がすごくきれいでした。一方の南面は意匠として庇が分かれていてその有無により経年変化に差が出ています。庇がない部分も汚垂れ処理の設計がなされているので極端に目立つものではありませんでしたが、竣工が同年でありつつも経年比較ができる建物は稀であり大変勉強になります。いずれにしても竣工から30年が過ぎたとは思えないくらいの綺麗さに改めて畏敬の念を覚えます。
外観南面。縁が切ってあり左側が「ときの忘れもの」、右側が集合住宅。
なぜ連窓??
阿部建築で見たことがないファサード。窓がここまで並ぶと気になります。なにか理由があるのでしょうか。現状を確認するとガレージの上階を除くと各階1スパンに5個づつ規則的に配置されているのがわかります。面ではなく格子状のような光を入れつつも、内外部ともに面の圧迫感を減らす、といった趣旨であれば室内用途との組み合わせが考えられますので、連窓側がパブリックスペース、ガレージ上が個室or水回り、といった感じで配置されているのではと推察しますが、正直核心ではないような気がします。図面か何かしらの資料でもう少し意図をくみ取れればよいのですが。。もしご存じの方がいらっしゃればご教示いただきたいです。
設計者の阿部勤さんと自邸である「中心のある家」は建築界隈では知らない人がいないくらい有名で、映画「蝶の眠り」のロケ地としても使用されました。僭越ながら私淑の建築家さんでして、お亡くなりになる前もその後の偲ぶ会にも参加させていただき先日はぼんたなにもお邪魔させていただきました。この度「ときの忘れもの」にもご縁をいただき、ただただ感謝です。
事務所の方にはお忙しいところご親切にまた写真の許可もいただき、ありがとうございました。部数が限定されているリトグラフですが、展示品はまだ在庫があるとのことでしたのでご興味持たれた方はぜひ。
ときの忘れもの:Watanuki Ltd. | Toki-no-Wasuremono
展覧:「没後60年 ル・コルビュジエ 建築賛歌」 2025 3/11~3/22 11:00~19:00
場所:東京都文京区本駒込
撮影/Iphone